こんばんは。ぶれいめんです。
9月13日から出されていた、19都道府県の緊急事態宣言と8県のまん延防止等重点措置が9月30日をもってすべて解除となりました。東京ではおよそ2か月半ぶり、沖縄ではおよそ4か月ぶりに宣言が解除されることになり、今年4月4日以来、およそ半年ぶりにどの地域にも宣言が出されていない状況となります。
皆さんの暮らしにはどう影響するでしょうか?
個人的には自粛の疲れかどうかわかりませんが、既に昨年4月に出された初の緊急事態宣言ほどの緊張感はなく、いい意味で我々国民はコロナウイルスとうまく折り合いをつけ、日常生活に戻っているように思います。席を一つ開けて座るなどのソーシャルディスタンスはもう当たり前のものになりましたよね。
コロナワクチン接種の広がりもあって、直近のコロナウイルス新規感染者数は、東京82人、大阪124人、福岡31人とのことです(参照:NHK特設サイト 新型コロナウイルス)。かくいう僕の勤務先も緊急事態宣言下での出社率は30%まで落とすように指示が出ていましたが、宣言解除後は70%まで出社率を上げて構わないと通達が出ました。
一方で、これから寒い時期が到来します(これを書いている今現在、大阪は30℃ありますが💦)。第5波、第6波が懸念されるところですが、引き続き気を引き締めて、手洗い・うがい・アルコール消毒など身の回りの出来ることから、自衛していきましょう!
さて、今回は脊髄小脳変性症の「遺伝子型」について、話していこうと思います。長い話になりそうなので3回に分けます。今回は自身の遺伝子型が判明した話をしようと思います。
非常に専門的で難しい話になります。極力間違った情報は提供しないように努めていますが、参考資料のリンクを貼っておりますので、気になった点がありましたら、そちらを見てみてください。
✔ 遺伝性と孤発性について ✔ 遺伝子検査開始~判明まで ✔ SCA7について
✔遺伝性と孤発性について
脊髄小脳変性症(以下SCD)には大きく分けて、遺伝性と孤発性の2種類があります。
●遺伝性
全国で約3万人患者がいる中で、およそ1/3が遺伝性のSCDです。常染色体優性遺伝、常染色体劣性遺伝、X連鎖性遺伝、ミトコンドリア遺伝などの遺伝形式で受け継がれるようですが、いずれも原因は病因遺伝子の働きにあるようです。遺伝子変異の中で多く見られるのは、DNA配列における3~5塩基程度の繰り返し配列が長く起こる、というものです。DNAの塩基には、アデニン (A) 、グアニン (G) 、チミン (T) 、シトシン (C) の4種類がありますが(昔、理科でやりましたね。懐かしい!)、この中の特定パターンの遺伝子の組み合わせ配列が異常に長くなります。
さて、親→子供への遺伝確率についてですが、どちらかの親が病因遺伝子を保有している前提で、常染色体優性遺伝の場合、子供への遺伝確率は50%となります。
さらに、先に述べたDNAの異常伸長が長ければ長いほど、発症年齢は若く、そして重症度もあがります。例として、親世代は発症年齢が50代であったものが、子世代では発症年齢が40代になるというものです(専門用語で表現促進現象と言います)。これは自分自身にもよく当てはまります。父親が僕の年齢だった頃を思い出すと、こんな病気であることは微塵も感じられませんでした。父親の発病を40代後半としても、僕は10歳程度 弱年齢化して発病しているものと思います。
最後に、遺伝性SCDの発病型には主に以下のものがあります(特に日本で患者が多いもの)。
SCA1、SCA2、SCA3(マシャド・ジョセフ病)、SCA6、SCA8、SCA12、SCA17、SCA31、SCA36、DRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)。
●孤発性
全国で約3万人患者がいる中の残り、およそ2/3が孤発性SCDです。孤発性とは、家族歴がみられない場合を指します。具体的には、両親、兄弟姉妹、子ども、および、祖父母、叔父・叔母、おい・めい、孫内に似た症状の人がいないことです。
孤発性SCDのほとんどは、多系統萎縮症(MSA)または、皮質性小脳萎縮症(CCA)と診断されており、ともに青年期以降に発症します。孤発性の場合、生活習慣との間に明らかな因果関係は見られず、病気の進行を左右するような生活習慣なども分かっていません。遺伝性と違いDNAの検査で病型を診断できるケースは非常にまれなようです。
孤発性には以下のものがあります。
皮質性小脳萎縮症、アルコール性小脳変性症、癌性小脳変性症、多系統萎縮症(オリーブ橋小脳萎縮症・線条体黒質変性症・シャイドレーガー症候群の総称)
参照:①遺伝性疾患プラス
③脊髄小脳変性症のすべて(日本プランニングセンター発行)
✔遺伝子検査開始~判明まで
●2019年7月
以前の投稿記事内で、大阪大学病院へ通院開始するまでの経緯について話しました(参照:Vol.3【難病・脊髄小脳変性症】病気と働き方について①)が、もともと ものが見えにくいことから始まって、頭部MRI撮影を行ったところ、小脳萎縮が見つかりました。父親の病状と照らし合わせた結果、これは遺伝性SCDで間違いないと告知を受けました。
●2019年10月
その後、診察を重ねていきましたが、どうも目が見えにくい原因がはっきりわからない。次第に “これはSCDの症状の一つなのでは?” と思い、主治医に相談し、遺伝子検査を行うことになりました(ちなみに、父親は遺伝子検査を行っておらず、病型が分かっていませんでした。遺伝性の場合、親と同型のパターンが多いようです)。
主治医を通してJ-CATに病状登録、国立精神・神経医療研究センターに検査を依頼しました。
ちなみに、J-CAT(Japan Consortium of Ataxias)とは・・・
厚生労働省の研究班を中心として運営される、脊髄小脳変性症を中心とした運動失調症の登録(レジストリ)システム。
患者の臨床情報を登録、診断の為に必要な遺伝子検査を行う。定期的に臨床症状の評価を行うことで、病型別の自然歴を明らかにすることを目的にしている。
●2020年8月
当初は、”長くても半年程度で結果が分かる” と言われていましたが、コロナウイルスの感染拡大に伴い、結果が出るまでに約一年かかりました💦 ただ、この時の検査結果は、日本人に一般的な型(DRPLA、HD、SCA1、SCA2、SCA3、SCA6、SCA8,SCA12,SCA17,SCA31,SCA36)のいずれにも該当しないというものでした。この11種類は日本国内のSCD型の70-80%をカバーしているようで、このいずれにも該当しないということは残り20-30%、特に視覚障害を合併する型が怪しいのでは?ということになり、SCA7にピンポイントであたりをつけ、再検査を行うことになりました。
●2021年1月
いよいよ再検査の結果が判明します。結果は・・・「SCA7であることにほぼ間違いない」というものでした。検査依頼から約1年半、ようやく自分の型が判明しました。合わせて、ものが良く見えない(視力が出ない)症状も、やはりSCDが原因であったんだと分かり、今までのもやもやが一気に晴れていく気分でした。病型が分かったからと言って、根治ができるわけではありませんが、少なくともこれからどういう症状が出てくるのか、おおよそ予測できます。(アンパンマンの歌詞じゃないですが)何だか分からないまま、病状の進行だけを傍観しているのは絶対に嫌だったので… まぁ、これは僕の性格的なものですね💦
✔SCA7について
やっと遺伝子型が分かり、一安心と言いたいところですが、それほど安心もしていられません。
というのも、このSCA7というのは日本では非常にまれな型らしく(欧米が多い)、同型の患者が非常に少ないのです。主治医からも “おそらく阪大では初めての症例”と言われました。
当時の僕はネットや文献などでSCDについて調べまくっていましたが、確かにSCA3やSCA6のレポートは良く見るのに、SCA7について書かれたものは一切(と言っていいほど)ない。ただ、先に紹介した「脊髄小脳変性症のすべて」という本の中には、以下のような記述がありました。
SCA7は頻度の低い疾患で、本邦においてもきわめて稀な病型です。臨床的には黄斑変性を伴います。初期症状は小脳失調もしくは視力低下で進行とともに眼球運動障害、腱反射亢進、深部感覚障害などが出現し、やがて失明します。痴呆や不随意運動、パーキンソン病様症状は稀です。表現促進現象が顕著な点もこの病型の特徴です。原因は第三染色体短腕にあるSCA7遺伝子中のCAG反復配列の異常伸長と考えられています。 (一部変更し「脊髄小脳変性症のすべて」より抜粋)
自分が抱えている症状にぴったり合致します。最初は視力低下からはじまり、黄斑変性(色素網膜変性症)により視神経委縮を生じる。表現型が顕著というのも うなづけます。というのもこの時期、僕の父親も遺伝子検査を行っており、SCA7という僕と同じ病型と判明します。ただ、今の僕と同年齢の父親を比較すると、父は眼鏡もしておらず(当然 遮光眼鏡もしていない)、何より病気とは分からないほど元気でした。今の僕とは大違いですが、これも顕著な「表現促進現象」のためと考えれば納得がいきます。また、CAG反復配列という言葉はJ-CATから送られてきた報告書内にも記載がありました(具体的なリピート数も書いてありましたが、ここでは伏せておきます)。
然しながら、最も気になっている そして 恐ろしい言葉が “やがて失明します” というもの。最初読んだ時は、えっ!マジかいな…と相当落ち込んだことを覚えています。
ただ、これについては、正直今の段階では半信半疑です。失明すると言っても「まったく視力がなくなる~社会的に失明する」まで様々なレベルがあります(僕の場合、既に視覚障害者手帳も持っていますし、眼鏡なしでは回りがぼやけて良く見えませんので、社会的失明に近い状態だと思いますが…)。
先に述べたように、日本人にはSCA7の方があまりおらず、ゆえに、この型に関する研究もあまり進んでいないのでは?と思います(米国では1件、治験報告があるそうです)。したがって、実際の症状はケースバイケースで微妙に異なってくるのではないかと思っています。正直、今の状態から完全に失明することは想像できず、この記述は間違いであって欲しいと願うばかりです(実際、僕の父も悪いなりに目は見えているようですし…)。
最後に、これは僕の希望ですが、SCA7の患者は絶対数は少ないかもしれませんが、僕と同じように悩みながら生きている方が確実に存在します。今後、他の型と同じようにこの型の研究が進み、根治できる日を迎えるために、これからの自分の症状の変化は逐次記録しておきたいと思います。医療関係者の方で、もしこのブログを見られた方は、どうか このような考えを持っているSCA7の患者がいること を覚えておいていただければと思います。
このブログのコメントでも結構です。Twitter、Facebookでも結構です。僕に望むことがあれば遠慮なく連絡してください。近い将来きっとこの病気で苦しむことがなくなる・根治可能な病気になることを信じて、喜んで様々な研究(治験)に協力させていただきたいと思っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回も、引き続き「遺伝子」をテーマに話していきます👋